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2019/11/16

仙人に会いに行く  弾丸京都・奈良  その2.5 夜ノ寧楽

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帰りのバスは奈良駅午後10時45分発ということで、夜の東大寺散策を企てた。

和辻哲郎の古寺巡禮の21章「〜月夜の東大寺南大門――当初の東大寺伽藍――月明の三月堂――N君の話」にあるような昼とはちがう夜の幽玄な雰囲気を体感したいという思いが以前からあったからだ。

まだ午後八時過ぎだというのに人はほとんどいない。 街路灯はあるものの道の奥は暗く、闇に引き込まれる錯覚に陥る。

時折聞こえる鹿のキーンという鳴き声が響く。

南大門に近づく。

月明かりがないため、常夜灯が届くところまでしか門の姿は見えず、あとは闇に溶けるようだ。

もちろん仁王像もおぼろげながらにしか見えない。

が、その大きさ、偉容はむしろ昼よりも強く感られる。

 

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門をくぐり正面の大仏殿を観るも全くの漆黒の世界。

しかたがないので、少し手前の二月堂の塚から坂道を上り、和辻絶賛の三月堂へ向かう。
写真ではフラッシュを適度に焚きながら撮影しているため建物がかなりはっきり見えるが実際はかなり暗い。
ぽつりぽつりと投光器のようなものがあるのだが、反射する壁がないため、光だけがはっきり見えるといった状態。

ここで不思議なことが起こった。

しばらく、坂を登ると投光器が三つ左手に光っている場所に来た。

こんな暗い場所に来ているのだと、家人に携帯電話の写メを送ろうとその光を撮ろうとしたとき…。

携帯電話のモニターに今撮ろうとしている光が映しだされている。

が、それとは別にちいさな光がふわふわと画面上を動いているではないか。

目をモニターから実際の風景に移してもその動く光はない。

もう一度モニターをみると光はいまだ動いている。

シャッターを切ると、その光は写真に確実に写っているのだ。

私の携帯ストラップは金属パーツがついているのでそこに光が乱反射しているのではないかと、ストラップをしっかり持って撮影し直しても同じ結果…。

目には見えないが携帯電話のカメラを通すと見える光。

本物の仙人に出会っていたのかもしれない。

怖いとかそういう感じはしないが、何となく「この先には来るな」と言われている気がしたので、携帯で撮った二枚の写真はそこで削除して東大寺をあとにした。

 

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道に鹿が飛び出した衝突事故が起こると聞くが、帰り道何度か遠くで急ブレーキをかける音がした。

自分が観ている前でも突然道路に飛び出す鹿がいた。 

まさか右左を確認するわけもないので、自動車は鹿が出るものだとおもって慎重に走るしかないだろう。

 

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まだ人気を感じる興福寺は建物のライティングがなされ、人工的ではあるが、夜らしい美しい姿を見せてくれた。

バスの集合時間30分前に奈良駅へ向かい充実した仙人に出会う旅を終えた。

追記
家に戻ってはじめて沖縄首里城火災のニュースを知った。

戦争中も木と紙と土でできた国・日本は焼夷弾によって大きな被害を受けた。
千数百年人から人へ伝世してきた国の宝もそのほとんどは木と紙と土でできている。
天災や人災、戦火によってこれまでに数多の宝が失われたことだろう。

現代の知恵をただ今生きている我々に向けるだけでなく、残された国の宝をしっかりと守り、未来につなげていくということにつかわれることを願ってやまない。

現代の科学の粋を極めても過去の文化を凌駕できない領域というのは確実にある。
そうした宝は守ることでしか未来に残すことはできないのだから。

今回限られた数ではあるが至高の宝を観た感動を是非未来の人々にも味わえるようにと切に思った。

 

 

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